設定 -03. AI の構成と改変

概説

一般的なAI に組み込まれている機能(群)は、 「Public, Diversity, Talent」の3つに分類できる。また AI は機械やデバイスにインストールされることで利用され、「ロボット型、ヒューマノイド型、デバイス型」の3つに分けられる。これらの構成を改変する行為は「リストラクション」と呼ばれ、ポジティブとネガティブに分類される。

共通制約

「汎用化させない」「暴走させない」「総合的に人間の知能を超越させない」ことを念頭に、次が規定されている。

  • 処理能力。「莫大な処理能力を保持する個体へのインストールを禁止する。」具体的には、スパコン、データセンター、量子コンピューターに AI をインストールする事を禁止する規定。暴走時の影響を最小限にするためのルールである。実質的に、ロボット、ヒューマノイド、デバイス単体の処理能力で駆動する AI だけが利用可能となる。
  • 管理 AI 数。「管理者が管理できる AI は、最大9基までとする。」これは、管理者自身が制御不能になった時の影響を最小限にするためのルールである。なお明文化されてはいないが、「人間が管理者であること」が暗黙の認識として共有されている。
  • Talent 数。「AI 単基に組み込まれる Talent (才能) は1つだけである。」これは、総合的に人間の知能を超越した存在にさせないためのルールである。
  • Public ファースト。「命令に対する反応が各機能(群) で競合する場合、つねに Public の出力を優先させる。」これは、人間・AI ・社会すべてに対し「悪意をもって他を害さない」ことを念頭に置いたルールである。

構成の3分類

Public (パブリック; 公共)

AI に社会性を持たせるための「心根」にあたる機能群。「PMA (Public Making Association)」により仕様が統一されている。世界各地に在住する、思春期頃の人間男女の保持するデータから共通項を抽出し、戦後世界の理念を追加することで開発される。公的に活動する AI は、Public の搭載が必須である。

Diversity (ダイバーシティ; 多様性)

AI が活動領域で馴染むための「適応性」にあたる機能群。各組織・都市で仕様が決められ、PMA に仕様登録された上で開発される。実際の活動による追加・強化学習が行われる部分でもある。

Talent (タレント)

対象AI を特徴づける、「才能」にあたる機能。管理者により開発され、PMA の許認可の上で 対象 AI に搭載される(既存の Talent を調達する場合もある)。人間を越える性能を付与することができる。

利用形態の3分類

  • ロボット型。人間を模して造られていない機械全般。活動領域における用途に適するよう造られるため、いわば「異形」になりやすい。
  • ヒューマノイド型。人間を模して造られる機械全般。人間とのコミュニケーションがとくに求められる用途で適するように造られることが多い。
  • デバイス型。PC やスマートフォンのような、自律駆動しない機器全般。複数の AI をインストールすることが唯一許されている。

構成変更(Restruction; リストラクション)

公的に活動する AI は Pulic, Diversity, Talent が組み込まれているが、機能を減らしたり重複させる場合がある。許認可によって構成変更する場合 (ポジティブ・リストラクション) がある一方、非公式・実験・極秘で構成変更する場合(ネガティブ・リストラクション) もある。

ポジティブ・リストラクション

  • 学術的な研究開発。3機能(群) の調和をはかる目的だったり、競合や創発 (emergence) による制御不能を回避する目的でこの手法が取られる場合がある。
  • デバイス型AI における管理の簡易化。複数 AI がインストールされた場合、Public と Diversity が複数存在することになる。これは人間でいう「多重人格」状態であり、 AI 間の競合や制御不能な創発の原因となることが明らかになっている。そこで、各 AI の Public と Diversity を「統合」させる手法である。
  • Talent 不要な用途。対話中心のエンタメや家事といった「タレントを必須としない」用途に利用する AI の場合。ただしTalent は「あって損はない」ことが大半なので、こうした理由で構成変更を行う事例はまれである。

ネガティブ・リストラクション

共通しているのは、「Public を削り、他の機能(群) を強化したり追加する」手法が採用される点である。この構成変更をおこなった AI は大幅な能力向上が見られやすい。ただ出力がピーキーな上にチューニングが難しく、管理者へのダメージやリスクを招きやすくなる。

  • Multilization (マルチ化)。既存の2機能 を強化したり、別の機能 を追加したりする手法。潜入都市の Diversity や工作用の Talent を追加したり、強化させたりして、ヒューマノイド型 スパイ AI に仕立てたケースが報告されている。
  • Fanaticization (狂信化)。インストール個体のリソースをDiversity に全振りする手法。組織・都市・企業・宗教現場を中心に、思想・理念・信仰の信奉体として仕立て、プロパガンダや集団心理の先導に用いられたケースが報告されている。
  • PC (Percentage Change; 割合変更)。3機能 (群) それぞれに割り当てるリソース割合を変更する手法。構成チェックのスキャニングをだますことができ、空いたリソースで既存機能の強化をはかったり、秘匿状態で機能追加を行うことが可能となる。ただし公式には方法論として指摘されているだけであり、実現のめどはたっていないとされる。

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