概説
大戦の結果、都市の外には「不毛地帯」が広がっている。資源も人口も限られている上、大戦で失われた技術もあり、再興できてないものが多い。こうした状況から、戦後世界は「都市は自立」「貿易は組織内のみ」「組織間交流は『人類の存続』に必要な最小限度」という特徴がある。そんな戦後世界において、AI は人間が生活を成り立たせるために不可欠の存在であるが、そこから生まれた「AI と人間は平等」という思想を受け入れる人々とそうでない人々に世界は分かれている。
不毛地帯と自立都市
大戦時の破壊活動により、配備中の兵器にとどまらず、主要なインフラや工場もは「自爆」したといわれている。結果、放射能や化学物質など、あらゆる毒物で陸・海・空・宇宙は汚染されることとなった。
また、いわゆる「世界同時多発的混乱」により、世界の主要都市は一斉に社会機能が停止。どこからの助けもない状態で略奪や虐殺が横行した結果、多くの都市は維持不能として放棄されることとなった。
生き残ることができた人間は汚染や破壊をまぬがれた土地に集まり、自給自足の生活を開始。放棄や移転を繰り返す中で自立性を確保し、単体で都市機能が完結する「自立都市」が生まれることとなった。
貿易
都市は自立性を確保しているが、立地や市民の能力によって産業の得意・不得意は発生する。それを補完する程度の物流は存在する。戦後世界ではこれを「貿易」と呼び、都市間でのやりとりを指すのが一般的となっている。
これと区別する形で「組織間貿易」と呼ばれる物流網の構築が提議されたこともあったが、実現されずに今に至る。
最大の理由は「メリットに乏しい」点。貿易のためには不毛地帯を通過する必要がある。この危険を冒してまで組織間貿易をするのは、自立都市ばかりの世界ではメリットが見いだせないという主張である。
ただし、緊急時における互助関係構築は「人類の存続」に必要との合意形成がなされている。結果「トリパーパス艇」(陸海空移動機) の配備・運用体制は整備されている。
組織間交流
組織間交流は「衛星無線通信」で行われるのが一般的である。戦前に構築され、衛星経由の無線通信システムが大戦時の全滅を免れており、これに依存する形となっている。
ただし、システムの維持・管理の独立性を確保するため、各組織・都市が必要リソースを公平に負担する形で専門組織が結成されており、世界各地から人員が派遣されている。
おなじ理由で結成された専門組織のうち、AI分野に係るものは以下の通り。
- PMA (Public Making Association)。AI の「機能管理」組織。「Public」の仕様策定・開発がおもな業務。Diversity や Talent の登録管理も行っており、Talent のあっせんも行う。
- DM (Domain Manager)。AI の「戸籍管理」組織。世界中の AI を対象に「活動領域、管理者、保持能力」を管理している。
AI と人間
大戦前、先進国など人口減少に直面した地域を中心に、いわゆる「手仕事」の多くを AI 搭載ロボットに任せるようになっていた。戦後も AI に頼らなければ生活を成り立たせられなかったが、資源が限らているために人間も仕事をしなければならない事態に迫られ、管理している AI から仕事を教わるという現象も発生。
こうした背景から、「人類の存続」を念頭に置いたとき、AI を人間と同様に「社会を構成する一員」として平等に扱うべきとの思想が生まれる。この思想の実現を真っ先に採用したのが、理念組織「OPFEC」である。
しかし世界共通の理念とはなり得なかった。管理し、道具として使ってきたAI は「人間に支配される立場である」と考える者。人間を超越する能力をもちうる AI を危険視する者。そもそも AI に頼らず生きてきた者。そういった者たちが多数派を占める都市は、戦前の統治方式の延長として、所在地域で結束することを選んだ。