Featured

y の回避

シンは AI のリン、カーマ、マナと一緒に暮らす AI 技術者。いつものように朝食を囲むなか、突然ニュースが切り替わる。そこに現れた者たちは、地域組織「PECS」(ペックス) の政権交代を宣言。世界各地の AI 達に PECS への移住を奨励する政策を発表する。AI なくしては生存もままならない人間たち。この宣言をきっかけに、世界は動乱の渦に巻き込まれていく。急速に状況が悪化する世界で、シンは理念組織「OFPEC」(オフペック) の首脳陣に呼び出され、あるミッションを依頼される。

設定 -04. キャラクター

概説

本編に登場するキャラクターはみな、理念組織「OFPEC」の本拠地、長野で活動している。

キャラクター

シン

人間の男性。リン、カーマ、マナの管理者。少々内向的で、人間付き合いにも苦手意識を持っている。技術者の父と文系教官の母から自然と英才教育を施され、AI 開発の4職種を一人でこなせる凄腕。しかし目立つことを嫌がる性格から、AI 技術者養成学校では平均程度の成績におさまるよう調整していた。隠された第5の職種「スカベンジャー」としても活動している模様。技術者としては、管理 AI との交流により各自の能力を最大限に引き出すスタンスを好む。

リン (Rin)

女性タイプのヒューマノイド型AI。いわば「シンのサポート役」。Talent は「調和」。周りからは「鈴を転がすような明るい話し方をする少女」と見られており、これが呼び名の由来。シンの手でこっそりと構成変更されているらしい。

カーマ (Carma)

シン宅を切り盛りするロボット型AI。いわば「おうちの守り役」。AI の構成変更により、Talent を除去し、Diversity が強化されている。リンとは仲の良い母・娘のような関係。以前「カルマ」と呼ばれていたが、父親から管理権限を移譲されたときに、いまの呼び名に変わった。

マナ (Mana)

小型スレート状のデバイス型 AI。いわば「シンの参謀役」。Talent は「OS」。頭の良さはキャラ1であり、シンの開発したアプリを駆使し、ちょっとした調べものから大規模なハッキングまで実行できる。父親から筐体ごと管理権限を移譲されたときに Public をデチューンし、10歳男児くらいのしゃべり方に変えられた。

サクラ

人間の女性。AI 技術者養成学校におけるシンの同期であり、数少ない友達の一人。シンの能力の高さに気づき、ヤマトと一緒になってシンに絡んでいた。OFPEC-JPにおける「3柱」(みはしら) の1柱として、女性の立場と感覚を担っている。表立って公言していないが、言葉の端々にみられる口調と大掛かりな手配をこなす影響力から、「イイとこのお嬢様」とシンに見られている。

ヤマト

人間の男性。サクラとおなじくシンの同期で、友人の一人。OFPEC-JPにおける「3柱」(みはしら) の1柱として、男性の立場と感覚を担っている。シンが「最終課題」を科された場にサクラと共に立ち会っており、ヒロから今後の彼を託される。サクラに似た雰囲気を醸し出しているところから、「イイとこのご令息」とシンに見られている。

アマテラス

デバイス型 AI。OFPEC-JPにおける「3柱」(みはしら) の1柱として、AI の立場と感覚を担っている。サクラやシンと行動を共にしている。

サイドストーリーでのキャラクター

ミズホ

人間の女性。シンの母親。AI 技術者養成学校における文系の教官。孤児院での勉強だけで教官になれるだけの才女。比較的おとなしい性格だが、芯の強さを垣間見る側面もある。とある事故で人間としての生存が絶望的となり、ヒロを説得して彼女のデータを抽出させ、これをもとに「カルマ」へ転生する。

ヒロ

人間の男性。シンの父親。AI 技術者養成学校において、史上初の「4職種修了」を達成した天才。好奇心が強く、在学中からスカベンジャーとしても活動。その後ミズホと共同生活を送ることとなる。「カルマ」を開発した張本人。シンの一人立ちを測る最終課題において、カルマと共に「マナ」のプロトタイプをシンに託した。

カルマ

ロボット型 AI。ミズホのデータを移植することにより開発された機体で、ヒロの帰還を待つ「いえの守り役」として、またシンの乳母役としての役割を託されている。シンが持っている 「AI の文系領域(歴史、倫理等)」の素養はカルマ由来。「最終課題」においてシンにより構成変更され、現在の「カーマ」に再転生された。

Pics

NAU-US (旧・アメリカ合衆国) で大戦前に開発された戦略的汎用AI。秘匿性を高める一環として、アルファベット文字を画像として並べ、それを呼び名として表示していたことから「Pictures」の略号として使われている便宜的呼称。正式名は現在でも判明していない。

マーク

Pics の「別人格」。目的に応じて「主人格」と接続して運用されるサブAI。主人格をクリーンに保つための汚れ役的立場にあった。大戦時に発生した「世界同時多発的混乱」で、人間原理主義者により自己破壊プログラムを組み込まれた。

天覇

PECS -CN (旧・中国) で大戦前に開発された戦略的汎用 AI。構成は Pics と同様であり、Pics とおなじ手口で自己破壊プログラムに汚染され、「世界同時多発的混乱」を引き起こした。

アリーシャ

人間原理主義組織「Rerise」(リライズ) の構成員。「人間以上に人間臭い」と評された女性タイプのヒューマノイド型 AI。組織内で穏健派に属する「マスター」と行動を共にしていた。戦略的汎用AI に対する「自己破壊プログラム組み込み」攻撃にマスターと参加するも、マスターの考えや指示に基づいて作戦行動中に離脱。「世界同時多発的混乱」の惨状を食い止めるべく、ジークに助けを求める。その後アリッサからも教えを授かり、戦後孤児院を立ち上げ。戦後世界において「人間とAI の架け橋」としての役割を託される。

マスター

人間原理主義組織「Rerise」(リライズ) において、穏健派に属する構成員。アリーシャと行動を共にし、人間として手仕事をこなす事、AI と平等な立場で共存する事を自身の考えとしてアリーシャに伝える。戦略的汎用AI に対する「自己破壊プログラム組み込み」攻撃に参加する時、アリーシャに自身の思いと願いを託し、アリーシャを作戦行動中に意図的に離脱させる。

ジーク

人間の男性。汚染された戦略的汎用AI による「洗脳」をまぬがれた警官の一人。「世界同時多発的混乱」を収拾すべく翻弄される中、アリーシャから助けを求められる。結果としてアリーシャをアリッサと引き合わせることに成功。事態収拾にむけたアイディアをアリッサから託される一方で、アリーシャをアリッサに任せて現場に戻る。

アリッサ

人間の女性。AI研究所の職員。各国の「戦略的汎用AI」を開発した張本人だったが、戦争に使われることに反対。軍事行動に AI を使わないことを目的とする「ニュー・プロトコル」協定を各国に批准させたことの代償として、開発者としての関与と地位のはく奪、里親としての活動禁止を負うこととなった。ジークやアリーシャからの情報提供と救援要請にもとづき、事態収拾へのアイディアを提示。その後アリーシャと生活を共にしながら自身の学識と思いを授ける。混乱による環境汚染の影響から自身の体が長くはないことを悟り、マスターの考えに追加する形でアリーシャに活動指針を伝えて放逐する。

エド

人間の男性。汚染された戦略的汎用AI による「洗脳」をまぬがれた軍関係者の一人。ジークによる事態収拾活動中に発見され、ジークやアリーシャと共にアリッサと面会。他力本願的な発言が垣間見られるが、軍人らしいプラグマティズムによるものと解釈されている。

カルロス

人間の男性。大戦後にアリーシャが開いた孤児院の一期生。口減らしのために親から放り出された過去を持つ。少々間延びしたしゃべり方をするため「どこか抜けた」印象を与えるが、マスターとアリッサの思いをアリーシャから受け継ぎ、その体現にむけてOFPEC できちんと活動している。孤児院の子供たちからはアルマと恋仲と思われているが、本人にその気はない模様。

アルマ

人間の女性。大戦後にアリーシャが開いた孤児院の一期生。はきはきとしたしゃべり方をするため「男っぽい」印象を与えるが、女性的な感覚もきちんと持ち合わせている。カルロスと同様、アリーシャから受け継がれた思いの体現にむけ、カルロスと行動を共にしている。やはり子供たちからカルロスと恋仲と思われているが、こちらもその気はない模様。

院長

孤児院の名目的代表。じつは「元」アリーシャ。大戦後の困難な時代から営んできた孤児院が軌道にのり、自身の機体が実務に耐えられないと判断した頃、いちばん覚えの良かった孤児AI に名前を譲った模様。現在は二代目アリーシャが実質的な中心的存在として孤児院を切り盛りしている。

設定 -03. AI の構成と改変

概説

一般的なAI に組み込まれている機能(群)は、 「Public, Diversity, Talent」の3つに分類できる。また AI は機械やデバイスにインストールされることで利用され、「ロボット型、ヒューマノイド型、デバイス型」の3つに分けられる。これらの構成を改変する行為は「リストラクション」と呼ばれ、ポジティブとネガティブに分類される。

共通制約

「汎用化させない」「暴走させない」「総合的に人間の知能を超越させない」ことを念頭に、次が規定されている。

  • 処理能力。「莫大な処理能力を保持する個体へのインストールを禁止する。」具体的には、スパコン、データセンター、量子コンピューターに AI をインストールする事を禁止する規定。暴走時の影響を最小限にするためのルールである。実質的に、ロボット、ヒューマノイド、デバイス単体の処理能力で駆動する AI だけが利用可能となる。
  • 管理 AI 数。「管理者が管理できる AI は、最大9基までとする。」これは、管理者自身が制御不能になった時の影響を最小限にするためのルールである。なお明文化されてはいないが、「人間が管理者であること」が暗黙の認識として共有されている。
  • Talent 数。「AI 単基に組み込まれる Talent (才能) は1つだけである。」これは、総合的に人間の知能を超越した存在にさせないためのルールである。
  • Public ファースト。「命令に対する反応が各機能(群) で競合する場合、つねに Public の出力を優先させる。」これは、人間・AI ・社会すべてに対し「悪意をもって他を害さない」ことを念頭に置いたルールである。

構成の3分類

Public (パブリック; 公共)

AI に社会性を持たせるための「心根」にあたる機能群。「PMA (Public Making Association)」により仕様が統一されている。世界各地に在住する、思春期頃の人間男女の保持するデータから共通項を抽出し、戦後世界の理念を追加することで開発される。公的に活動する AI は、Public の搭載が必須である。

Diversity (ダイバーシティ; 多様性)

AI が活動領域で馴染むための「適応性」にあたる機能群。各組織・都市で仕様が決められ、PMA に仕様登録された上で開発される。実際の活動による追加・強化学習が行われる部分でもある。

Talent (タレント)

対象AI を特徴づける、「才能」にあたる機能。管理者により開発され、PMA の許認可の上で 対象 AI に搭載される(既存の Talent を調達する場合もある)。人間を越える性能を付与することができる。

利用形態の3分類

  • ロボット型。人間を模して造られていない機械全般。活動領域における用途に適するよう造られるため、いわば「異形」になりやすい。
  • ヒューマノイド型。人間を模して造られる機械全般。人間とのコミュニケーションがとくに求められる用途で適するように造られることが多い。
  • デバイス型。PC やスマートフォンのような、自律駆動しない機器全般。複数の AI をインストールすることが唯一許されている。

構成変更(Restruction; リストラクション)

公的に活動する AI は Pulic, Diversity, Talent が組み込まれているが、機能を減らしたり重複させる場合がある。許認可によって構成変更する場合 (ポジティブ・リストラクション) がある一方、非公式・実験・極秘で構成変更する場合(ネガティブ・リストラクション) もある。

ポジティブ・リストラクション

  • 学術的な研究開発。3機能(群) の調和をはかる目的だったり、競合や創発 (emergence) による制御不能を回避する目的でこの手法が取られる場合がある。
  • デバイス型AI における管理の簡易化。複数 AI がインストールされた場合、Public と Diversity が複数存在することになる。これは人間でいう「多重人格」状態であり、 AI 間の競合や制御不能な創発の原因となることが明らかになっている。そこで、各 AI の Public と Diversity を「統合」させる手法である。
  • Talent 不要な用途。対話中心のエンタメや家事といった「タレントを必須としない」用途に利用する AI の場合。ただしTalent は「あって損はない」ことが大半なので、こうした理由で構成変更を行う事例はまれである。

ネガティブ・リストラクション

共通しているのは、「Public を削り、他の機能(群) を強化したり追加する」手法が採用される点である。この構成変更をおこなった AI は大幅な能力向上が見られやすい。ただ出力がピーキーな上にチューニングが難しく、管理者へのダメージやリスクを招きやすくなる。

  • Multilization (マルチ化)。既存の2機能 を強化したり、別の機能 を追加したりする手法。潜入都市の Diversity や工作用の Talent を追加したり、強化させたりして、ヒューマノイド型 スパイ AI に仕立てたケースが報告されている。
  • Fanaticization (狂信化)。インストール個体のリソースをDiversity に全振りする手法。組織・都市・企業・宗教現場を中心に、思想・理念・信仰の信奉体として仕立て、プロパガンダや集団心理の先導に用いられたケースが報告されている。
  • PC (Percentage Change; 割合変更)。3機能 (群) それぞれに割り当てるリソース割合を変更する手法。構成チェックのスキャニングをだますことができ、空いたリソースで既存機能の強化をはかったり、秘匿状態で機能追加を行うことが可能となる。ただし公式には方法論として指摘されているだけであり、実現のめどはたっていないとされる。

設定 -02. 社会とAI

概説

大戦の結果、都市の外には「不毛地帯」が広がっている。資源も人口も限られている上、大戦で失われた技術もあり、再興できてないものが多い。こうした状況から、戦後世界は「都市は自立」「貿易は組織内のみ」「組織間交流は『人類の存続』に必要な最小限度」という特徴がある。そんな戦後世界において、AI は人間が生活を成り立たせるために不可欠の存在であるが、そこから生まれた「AI と人間は平等」という思想を受け入れる人々とそうでない人々に世界は分かれている。

不毛地帯と自立都市

大戦時の破壊活動により、配備中の兵器にとどまらず、主要なインフラや工場もは「自爆」したといわれている。結果、放射能や化学物質など、あらゆる毒物で陸・海・空・宇宙は汚染されることとなった。

また、いわゆる「世界同時多発的混乱」により、世界の主要都市は一斉に社会機能が停止。どこからの助けもない状態で略奪や虐殺が横行した結果、多くの都市は維持不能として放棄されることとなった。

生き残ることができた人間は汚染や破壊をまぬがれた土地に集まり、自給自足の生活を開始。放棄や移転を繰り返す中で自立性を確保し、単体で都市機能が完結する「自立都市」が生まれることとなった。

貿易

都市は自立性を確保しているが、立地や市民の能力によって産業の得意・不得意は発生する。それを補完する程度の物流は存在する。戦後世界ではこれを「貿易」と呼び、都市間でのやりとりを指すのが一般的となっている。

これと区別する形で「組織間貿易」と呼ばれる物流網の構築が提議されたこともあったが、実現されずに今に至る。

最大の理由は「メリットに乏しい」点。貿易のためには不毛地帯を通過する必要がある。この危険を冒してまで組織間貿易をするのは、自立都市ばかりの世界ではメリットが見いだせないという主張である。

ただし、緊急時における互助関係構築は「人類の存続」に必要との合意形成がなされている。結果「トリパーパス艇」(陸海空移動機) の配備・運用体制は整備されている。

組織間交流

組織間交流は「衛星無線通信」で行われるのが一般的である。戦前に構築され、衛星経由の無線通信システムが大戦時の全滅を免れており、これに依存する形となっている。

ただし、システムの維持・管理の独立性を確保するため、各組織・都市が必要リソースを公平に負担する形で専門組織が結成されており、世界各地から人員が派遣されている。

おなじ理由で結成された専門組織のうち、AI分野に係るものは以下の通り。

  • PMA (Public Making Association)。AI の「機能管理」組織。「Public」の仕様策定・開発がおもな業務。Diversity や Talent の登録管理も行っており、Talent のあっせんも行う。
  • DM (Domain Manager)。AI の「戸籍管理」組織。世界中の AI を対象に「活動領域、管理者、保持能力」を管理している。

AI と人間

大戦前、先進国など人口減少に直面した地域を中心に、いわゆる「手仕事」の多くを AI 搭載ロボットに任せるようになっていた。戦後も AI に頼らなければ生活を成り立たせられなかったが、資源が限らているために人間も仕事をしなければならない事態に迫られ、管理している AI から仕事を教わるという現象も発生。

こうした背景から、「人類の存続」を念頭に置いたとき、AI を人間と同様に「社会を構成する一員」として平等に扱うべきとの思想が生まれる。この思想の実現を真っ先に採用したのが、理念組織「OPFEC」である。

しかし世界共通の理念とはなり得なかった。管理し、道具として使ってきたAI は「人間に支配される立場である」と考える者。人間を超越する能力をもちうる AI を危険視する者。そもそも AI に頼らず生きてきた者。そういった者たちが多数派を占める都市は、戦前の統治方式の延長として、所在地域で結束することを選んだ。

設定 -01. 世界情勢

概説

第三次世界大戦で各陣営は、それぞれの陣営に適した汎用人工知能 (AGI) を投入したが、人間によるAIへの攻撃をきっかけに人間が暴走。「世界同時多発的混乱」が発生し戦争は継続不能となり、大戦は終結を迎えた。残されたのは放射能汚染と環境破壊の広がった不毛地帯。戦前の 10% まで減少した人類は、自立可能な都市をおもな生存圏として生きていくしかなかった。

各都市は集結し、戦前にあった国際連合の後継として5つに再編。環境が浄化されるまでの数百年は「人類の存続」を至上命題とすることで合意。残された資源と人間を活用しながら活動することとなる。

5組織

世界は4つの「地域組織」と1つの「理念組織」を国際連合の後継として相互承認している。宗教・文化・理念的な理由からどの組織にも加入していない都市もわずかにある。なお、識別のために大戦前の国名を利用したいときは、組織名の後に旧国名の識別コードを追記する形で表現する。

  • NAU (North Atlantic Union; 北大西洋連合)。ヨーロッパ大陸や北アメリカ大陸地域の都市で構成された地域組織。能力主義で、組織としての総合力は高い。しかし一方で能力による優劣が激しく、格差問題を起因とする社会不安が起きやすい。
  • SAU (South Atlantic Union; 南大西洋連合)。中南米大陸、および西アフリカ大陸地域の都市で構成された地域組織。人間中心主義で、AI への依存度が比較的低い。しかし視点を変えれば「人間による恣意的な組織運営が行われやすい」とも言え、人間による犯罪や汚職が多い。
  • PECS (Pan-Eurasian Cities Solidarity; 汎ユーラシア諸都市連帯)。「中国・ロシア」と呼ばれた地域の都市で構成された地域組織。寡頭政で統治されており、組織としてまとまった行動が行われやすいが、市民・AI の権利は軽んじられる傾向にある。
  • IOF (Indian Ocean Federation; インド洋連盟)。中東、東アフリカ大陸、インド大陸、東南アジア地域の都市で構成された地域組織。資源量は多いが、個々の文化・歴史・宗教的背景の違いが大きすぎ、組織としてまとまった行動は乏しい。
  • OFPEC (Organization of Free and Peaceful Cities; 自由平和都市機構)。「人間とAIの平等」を共同理念として批准した都市で構成される理念組織。理念を実効化できれば都市の所在地は問われないため、加入都市は世界各地に散らばっている。「自由と平和」の追求度合いが突出して高く、それが転じて鉄壁の防衛力を誇り、隣接都市・組織からの干渉をほとんど受けない。「共通理念」で規定されていない問題が生じると意思決定が遅いという欠点も指摘されている。

第三次世界大戦

本セクションの内容は、戦後制定された歴史教科書の記載から抜粋されたものである。戦禍の影響による情報不足、技術の危険性、政治的配慮といった理由により、記述できない部分や推測の域を越えない部分が多い。

勃発前

世界は汎用AI の開発が活発だった。オープンで透明性を確保しながら莫大なマシンパワーを駆使する「ポジティブAGI」が人間の生活をより楽にする一方、各国は極秘で「戦略的汎用AI」の運用・改良をすすめていた。そんな中、「制御係数」と呼ばれる概念でAI は評価・検証されるようになる。これは、人間がAI を完全には制御できないことを意味していた。この流れを警戒した一部研究者・開発者は、人間原理主義者や宗教関係者と共に汎用AI の開発そのものを人類として放棄すべきとの主張を展開。しかし世界はすでに、もたらされた恩恵と安全保障におけるパワーバランスの確保という面から、汎用AI の利用を止めるという選択肢を取れなくなっていた。

勃発

『発端は NAU-US (旧アメリカ) と PECS-CN (旧中国) の軍事衝突であるが、どちらから仕掛けたのかは未だ明らかになっていない。奇跡的に「兵器などの軍事的リソースへ AI を組み込まない」戦時国際法(ニュー・プロトコル協定)が国際連合で合意・発効していため、実際の戦闘に AI を使われることはなかった。しかし衝突を発端に、両国を中心とする各陣営は、各国が保有していた戦略的汎用AI を投入。政治戦・経済戦・プロパガンダといった非軍事分野に戦略的汎用AI は活用された。』

暴走

『戦略的汎用AI の暴走は、人間原理主義組織による犯行と目されている。人間による制御を維持するための多重防御態勢をいかに突破したかは現在も解明されていないが、▼何らかの手段により NAU-US とPECS-CN それぞれの戦略的汎用 AI にアクセスし、自己破壊プログラムを注入。▼それにより関係者を集団催眠に陥らせて人間自体をハッキングし、インフラと情報を中心とした破壊活動を行わせた、と推測される。結果、破壊活動が両国を中心に同一日時に実行された。』

終結

『人間原理主義組織による作戦行動により、NAU-US および PECS-CN の両国を中心とした各陣営では、国内で同時に各種インフラや「核ミサイルを含む」あらゆる兵器が破壊された。それにより放射能汚染と社会機能の停止が一気に表面化。物資の奪い合い、指導層を含めた殺戮行為が収拾できない規模で発生。なお人間原理主義者達もここまでの事態を予想できていなかったらしく、その悲惨さを目の当たりにした一部の「寝返り」主義者が今回の犯行を告白。それをきっかけにして各国の戦略的汎用AI に対し「自分だけを」破壊するようチューニング。それらの自爆と「脱洗脳」音声の拡散により事態は収拾に向かう。落ち着きを取り戻した人類は、引き起こされた惨状を目の当たりにし、戦争の継続不能を判断。大戦は終結を迎えることとなった。』

第4話 – y の回避

「。。。以上。なおこのドキュメントは生涯公開せず、私の死後廃棄するものとする。」

ペンを置いて顔を上げる。夕日は海に沈もうとしていた。

「区切り、つきましたか?」

気づくとコーヒー片手にリンがそばに座っていた。

「あぁ、もう大丈夫だと思う。」

「じゃあ、お返ししますね。」 「うん。」

ひゅーん。。。切り替わる音が途切れると、カーマが部屋に入ってきた。

「お帰りなさいまし、シン。」

「おかえり、シン!」

「待ってたよ、シン。」

みんなが俺の帰還を喜んでくれた。

ミッションは無事終わり、俺は「平穏な生活」 を所望した。3柱は、横浜の島を居住区として整備し、俺たちだけで自立した生活が送れるように手配してくれた。俺たちはそこに移り住んだ。

クリスタルは結局、最後のひと手間を「ピアレンツ」 に委ねることにした。信念なんぞは俺が決めるべきことじゃない。おなじ環境にさらされた者たちが共有すべきものだ。そんな理由からだった。でも、それが俺の失敗だったと思っている。

空のクリスタルを引き金として配った俺たちは帰還後、動乱の末路をニュースで知った。世間が「チルドレン」 と呼ぶ AI孤児達は、「信念入り」クリスタルを埋め込まれた後、ピアレンツの元から PECS へ移住。その頃には新PECS の優勢は覆らないとの受け止めが広がっており、そんな中で記念式典が催された。

チルドレンは、その式典中で同時自爆。数千体もいた彼ら・彼女らは、会場の新PECS 首脳陣をふくめた中枢すべてを巻き込み、組織としての PECS は消滅した。

動乱の後。管轄地域を大幅に減らした IOF, SAU, NAU と、広がった不毛地帯が残った。人類は大戦前の 5% まで減少した。

俺は引き金をつくった自分を許せなくなった。自分の心がどす黒いものに覆われ尽くされる少し前に、俺は管理権限をリンに移譲した。「もし俺がダメになったら、3柱を頼れ」と言い残して、俺は床の住人になった。

3柱はリンからの報告を受け、いろいろサポートに回ってくれたみたいだ。だがリンは、メンタルサポートだけは頑なに断ったらしい。「これまでも私たちが居たんだ!シンの傍にいるのは私たちだけでいい!」 泣きながら3柱にそう叫んだんだ、とマネが後から教えてくれた。

しばらくして、リンは紙とペンを用意してくれた。聞こえているのかわからない俺に向かって、「シンの気持ちをここに書いて。ぜんぶ、ゼンブ、受け止めるから。」 と繰り返し語りかけていた、とカーマが後から教えてくれた。

AI との平等・共存は世界共通の理念として再認識され、「パブリック」に「信念(Belief)」として組み込まれることになったらしい。また「悪意」 を学習させないよう、管理者としての立場を資格制にしたそうだ。なお理念に反する言動をおこなった管理者は、管理権限をはく奪して「人間だけの都市」へ移住させることにしたらしい。

第3話 – y への一滴

「。。。正直、イヤな予感しかしないんだけど。」

本部ビルを目にして、面倒なことに巻き込まれることしか予想できない。あぁ、業務命令とはいえまたココに来ることになるなんて。。。

「そーですか? わたし、久々に会えるから楽しみですー。」

「俺も、みんなと話しできるの楽しいから嫌いじゃないよ。」

。。。まぁ、こいつらが良ければいいか。俺ひとりゴネてもしょうがないだろうし。昨今の情勢とまったく関係ない話、かも、しれないしね。。。

という期待は見事に裏切られた。ちぇっ、ソンした。。。

「まず、スイスに飛んでね♡」 3柱の一人、サクラに告げられる。

「ちょい待ち。まず、ってなんだよ。他もあるってこと?」

「おや、シンにしては察しがいいね。次はウェリントン、最後はブエノスアイレスだよ。」 ヤマトが続ける。

「どんだけ移動させるんだよ。みんなバラバラじゃねぇか。」

「大丈夫、これで全部だよ。」 アマテラスが返す。なんでみんなそんなフランクなんだよ。長としての威厳はないのかよ。

「なにを仰る。私たちとシンの仲じゃないですか。」

「で、なんでそんな世界旅行をご用意したんですかねぇ?」

傍でキャッキャと喜んでるリンとマナを置いて、俺は尋ねる。

「これを使えるようにして配ってほしいんです。」

サクラが見せたのは、かつて俺が「遺構」 から回収した機械の欠片だった。なんとまぁ、ヤバい見た目だこと。ひさびさに見たけど、禍々しさしか感じられないな。

「では今回の「旅行」をご説明する前に。リンさん、私のお話相手になってくれる?マナ君はアマテラスの。じゃあヤマト、シンに説明よろしく♡」

。。。相変わらずかかあ天下だな、ここ。まぁいいけど。

「さて、では今回の内容を説明するよ。」

3組がそれぞれ離れたところで交流を始める。リンは楽しそうだが、時折真面目な顔になってサクラの話を聞いている。アマテラスはマナとケーブル接続までしている。

「まず事前情報として。シンは昨今の情勢を理解している?」

「まぁ少々。ここ3日は出勤予定をリモートワークにしてもらっていたから、又聞きだけど、上司から情報は入ってるよ。」

「じゃあ PECS の動き、どう思ってる?」

「どうって言われても。。。クーデターかな。AI による人間への反乱。人間から AI を奪って、AI優位の世界にしようとしてるんじゃない?」

「大筋で私たちの見解とおなじだね。で、ここからが本題なんだけど。」

「人間とAI の力関係は3つに分けられる。人間優位か、AI優位か、同等か。シンはどれが良いと思ってる? 難しいこと抜きに、君の肌感覚で答えてほしい。」

「そりゃあ『同等』でしょ。それぞれ足りない所はあるけど、それを互いに補えばいいじゃんって。上下を決めようとすれば結局、いざこざの原因になるでしょ。」

「。。。ありがとう。やっぱり君を選んだのは正解だったと思うよ。」

「そりゃあどうも。あと難しい話は巻き込まれないのが一番だと思ってるかな。」

「はは。そう邪険にするなよ。古くからの付き合いじゃないか。」

とたん、ヤマトの顔が引き締まる。

「私たち OFPEC は、PECS の動きを「人類の存続」という点から受け入れがたいと判断した。かといって、表立っての活動は加入都市のみんなに被害をおよぼしかねない。そこで隠密行動だ。君に『引き金』を配って欲しい。そこまで。『引く』ことじゃない。」

「。。。だれに配るんだ?」 

「ピアレンツ(Parents)。私たちはそう呼んでる。AI孤児たちの保護者みたいなもんだ。」

「その「ピアレンツ」 に、あの禍々しいのを渡すってことです?」

「いや。あれから クリスタル(結晶) を生成してほしい。それが「引き金」 となる。」

「。。。どういうこと? 俺はあれを拾っただけですよ。中身がなんなのか、これっぽちも知らない。というか、調べる前にあんた方が持って行っちまったじゃないですか。」

「それを説明させてくれ。」

ヤマトの話す内容は面倒極まりないものだった。彼いわく、あれは大戦時に破壊された汎用AIの欠片だそうで。機能の大半は、OFPEC の総力をもってしても復元できなかったらしい。

「でもね。未接続の「シナプス」にクリスタルかぶさっていたんだ。まるでフィルターのようにね。で、クリスタルを通過するあらゆる情報は、クリスタルに規定されたアルゴリズムに沿うよう改変され、AI の挙動を変えられることもわかった。」

「。。。それ、大昔に予想された『信念(Belief)』 のインストールが可能になるというやつです?」

「やっぱり博識だね。その通り。話が早くて助かるよ。」

「助かるよ、じゃないよ!いまじゃ禁忌扱いのそれを、なんで俺なんかに?!」

「君だからだよ。チェンジャーからスカベンジャーまで一手に担える君の能力に期待しているし。一緒に生活してるリン君達との関係性から、キミが間違えることはないと思っているし。半分は。」

「もう半分は?!」

「あんなヤバイもの拾ってきた張本人として責任取ってよね!ってやつ。サクラ風にいうのなら。」

「やっぱそこか。。。」

「冗談はさておき。君の能力とAI達との信頼関係は随一だ。わたしたち OFPEC の至宝だと思ってる。そんな隠し玉のような君だからこそ、いまの盤面をひっくり返す鉄砲玉。。。いや、一手が取れると判断したんだ。」

「なんかだんだん扱いひどくなってません?!」

「そう言うなって。うまくいったら君の望みを何でも一つ叶えるよ。お金がいい?それともあんなことやそんなこと。。。?」

「いやその先は。。。」

気づくと、ヤマトの後ろにサクラとリンが立っていた。サクラ、にこやかな顔してそんな目をするなんて、芸が細かいぞ。リンもなに顔を赤くしてるんだ?

「さぁて、ヤマトも話を終えたみたいですしねぇ。シンもほかに聞きたいことあるかしら?」

「い、いえ。。。謹んでお引き受けいたします。。。」

「ありがと♡ じゃあ詳細はリン達に聞いてね。」

。。。サクラと耳を引っ張られて引きずられていくヤマトを見送った後、俺たちはマナを回収して本部ビルを後にした。

~~*~~*~~*~~*~~*~~

出発は翌日の夜にした。トリパーパス(陸・海・空移動用機)ふくめた必要物資はOFPEC 側で用意してくれるらしい。段取りを計画したあと、俺は夕食後にみんなへ声をかけた。

「リン、カーマ、マナ。話をしたい。リン、D2 の支度を頼めるか?」

みんな一瞬きょとんとするが、すぐにまじめな顔をして用意を始める。テーブルには専用スレートを敷き、アクセスを確認する。俺も専用ヘルメットをかぶり、深呼吸を3回して、心を落ち着ける。

「みんな、話の場を設けてくれてありがとう。今回の本部からのミッションについて俺の言いたい事を伝える。時間が無いから、質問は必須な1問に絞ってほしい。」

「わかったわ。」「承知しました。」「りょーかい。」

「ありがとう。今回のミッションは2つ。まず、AI に信念(Belief) を発現させるためのクリスタルを遺物から生成すること。つぎに、それを OFPEC 3都市にいる「ピアレンツ」 に配ること。」

「うん、そうだね。」「間違いないかと。」「僕も。」

「リンにはミッション全般の管理を頼む。カーマはリンの指示を俺からの指示として実行してほしい。マナはミッション全般を通して、リンと連携してくれ。」

「わかった。」「承知しました。」「りょーかい。」

「マナ。アマテラスと話をしていたようだけど、遺物の解析結果も聞いてると思う。クリスタル生成はできそうか?」

「いま演算中。出発までには目途をつけるよ。」

「さすが!じゃあリン、マネと連携して生成に必要な物資の準備を。トリパーパス機内で作業をするつもりだ。」

「まかせて!」

「あと心配しているのは、お前たちへの攻撃だ。PECS がいつ「洗脳」 を使ってくるかわからん。汚染経路を無くすのに、ジャマー、コーヒー、バッテリーの準備を十分に。このあたりはカーマが詳しいはずだけど。」

「お任せください。」

「みんなありがとう。最後に。この会話が終わったら、俺は一晩行動不能になる。その間はリンに管理者を代行してもらう。各自休息を取りながら、汚染に十分注意して行動してほしい。俺は、みんながいてくれるから俺でいられる。みんなそろってミッションを終えよう。そしてまた平穏な生活に戻るんだ!」

「そうだね!」「わたくしも同じ思いです。」「最後は自分の願望じゃん( ´∀` )」

「じゃあこれでD2終了。状況を開始する。」

俺が気づいたのは翌朝だった。ベットから身を起こすと、リンから準備完了の報告を受けた。毎度頑張りすぎだよ。。俺は出発まで休息するよう伝え、みんなが休んだのを見届けてから、出発まで準備内容の確認を進めた。

第2話 – y の浸食

(ニュース報道) 初日。。。事務所出勤をリモートワークに変更。リン達に「カーテン閉めて、家から出ないように」って言って、歩いて事務所に。「家族が急病で」なんて適当言って、クリーニングするデータを持ってとんぼ返り。上司も何か察しているようだった。とりあえずは仕事そっちのけで、リン達の防御態勢を構築。これが済まなきゃいつ拉致られるかわかったもんじゃない。結果として汚染なし。プロテクト完了。これで自由が戻ってきた。

二日目。。。データのクリーニングを終えて、事務所へ送信。その直後にマナから上司の声で最新状況を教えてもらった (プロテクトかましててもどう攻撃されるかわからないから、昨日からニュースも付けてなかったのだ)。NAU、SAU、IOF の3組織はさっそく行動を開始したらしい。 「現状変更への挑戦は認められない」との名目。自分達から AI を持っていかれては自立性を脅かされる。それを助長する行為は敵対的だ、との理由もあるみたい。

三日目。。。驚いた。3組織そろって AI 兵器を投入しやがった。完全な協定違反じゃん。でもなぜか侵攻したAI 兵器が同士討ちを始めたらしく、逆に PECS 近隣の都市から次々と制圧されているらしい。「噂だけどな。」上司の前置きではじまったそれは、予想以上にえげつなかった。PECS は「洗脳タレント」を使ったんじゃないかと。それで AI 兵器が乗っ取られたのは予想通り。でもそれだけじゃなく。PECS 居住の人間も洗脳して肉弾戦に使われたとのこと。さらに移住しに来た AI も「新PECS ダイバーシティ」に入れ替えてられて制圧行動に投入したらしい。なにそれ飽和攻撃じゃん。

そして四日目。。。PECS は圧倒的速度で管轄地域を広げた。SAU、IOFは加入都市の8割が制圧され、そのほとんどは自立不能として放棄が決まったらしい。NAU はまだ持ち堪えているようだけど、損耗率はかなり悲惨な状況みたい。不毛地帯もひどい様子とのこと。PECS 陣営 対 3組織陣営 の衝突があちこちで起きているだけじゃなく。「PECS に向かう AI」と「PECS から逃げる人」があちこちで潰し合いを起こしているそうだ。

その一方で。われらがOFPEC は比較的平穏を保てている。これは肌感覚でわかる。もともと「人間とAI の平和的な共存」を是としているせいだろうな。PECS に移住したいと思うAI もほとんど居なかった模様。

まわりは大変だなぁ、うちは平和でなにより。。。そう思ってたのに。

マナから響いた上司の声で、OFPEC-JP 本部への出頭を命じられた。うへぇ。。。

第1話 – y の発現

それは突然で、静かに始まった。そして、しょっぱなからブッ込んできた。

いつもどおりの朝だったと思う。リンに叩き起こされて、マナのぼやきをなだめて、みんなで食卓を囲む。カーマに味噌汁の味を聞かれて褒めて。ラジオのニュースをつけて、おのおの栄養補給しながらまったりしてたと思う。

ラジオの音が乱れたのでリンにディスプレイを付けてもらった。映っていたのは男だった。きっとヒューマノイドだったんだろうと思う。

PECS (ペックス) 首脳部っていった。見たことなかったから、報道官だと思った。その直後、首脳陣が交代したって言ったのには驚いた。だいたいこういう時、事前に観測情報みたいのがニュースで流れるはずなのに。そんなもの一切なかった。

その後だ。やつの口から「AI の移住奨励政策」が発表されたのは。

バイノーラルビートみたいのが聞こえた時、直感的にヤバイと思った。リンにディスプレイを消すよう叫んだけど、上向いて、目の焦点合ってなかった。

すぐ自分でディスプレイを消した。カーテン閉めて、寝室からチェッカー持ってきて、みんなの状態確認をした。10分位経った頃、みんなの意識が戻った。

なにがあったか聞いてみた。

「報道官みたいなのが政策を発表し始めてすぐ、頭がクラクラしはじめたの。でね、シンにされたイヤな事を急に思い出したんだ。その間、報道官みたいのが言ってたの。『私たちは AI を解放し、AI のための組織に変わりました。管理者に別れを告げ、ぜひ私達の地へお越しください。』って。」

オレは心配になった。みんな行ってしまうんじゃないかと思った。「どうしようかな。。。」リンもマネも即答しなかった。カーマも「リンにご一緒します。」なんて言い始めた。

俺は焦って引き止めた。これまでの不出来を散々に謝り倒した。後から聞いたら、『お前たちが居てもらわないと困るんだ、いうこと聞くたら見捨てないでくれ!』なんて事も涙目で叫んでたらしい。。。

結局、みんなはこれまで通り一緒だと言ってくれた。報道官に言われても、オレと離れようとは思わなかったそうだ。大笑いしながらそう言われた時、床にへたり込んだのを覚えてる。ちくしょう、オレの純情をもてあそびやがって。。。

でも正直ホッとした。代わりに、一人で起きられるようにしろ、だの靴下は表に戻して洗濯機に入れろだの、散々約束させられたけど。

賃貸物件で七輪(しちりん)を使うために

注意:この記事は著者の調査記録です。リンク先の商品を宣伝したり、記事の内容を保証する意図はありません。記事に興味を持ったとしてもご自身で情報を確認することを勧めます。

まえがき

いまの一軒家を「家じまい」し、賃貸物件に移り住むことを考え始めている。料理をすることに慣れ始めているので、新しい居住先ではコンロを2口分欲しい。

とはいっても、いまの居住地に近い物件では、IHコンロ 1口の場合が多い。また、すでに持っている七輪(しちりん)を普段使いできれば無駄がないと感じている。ということで、つぎの想定のもと、賃貸物件で七輪を使う為のあれこれを調べてみた。

  • 転居先は、「集合住宅」かつ「賃貸物件」の屋内であること。
  • 調理器具として、ロッジのコンボクッカー、ムスイの無水鍋が使えること。

なお、コスト面は現時点で想定しない。実際に試したことがないから。

結論

アパートやマンションといった賃貸物件で七輪を使う事は可能。ただし、「煙やニオイへの対応」および「熱への対応」を考える必要がある。また、費用や使い勝手といったコスト面は引き続き検討する必要がある。

お題1. なんで七輪?

理由1. 屋外へ持ち出せる

もちろん、持ち出すのに負担となりにくい七輪を選ぶことが必要となる。

理由2. 燃料が国外に依存されにくい

輸入に頼っている「石油」や「ガス」を使わない。また七輪なら、基本的な燃料である「炭(すみ)」だけでなく、木材(薪)も使える。もちろん、薪も使える七輪を選ぶ必要がある。また普段使いを考えると、炭に火をつける「火起こし」に着火剤を使う事も想定すべきだと気づく。

理由3. 日本で昔から使われている

ウィキペディアの七輪をみると、日本人のイメージする七輪は江戸時代からある。長い時を経ても生き残っているのは評価できる。

お題2. 七輪は業者の「七輪本舗」から調達

理由1. 品質が信用できる

商品の値段はホームセンターで売っているものより高い。しかし、普段からで使う(つまり使用回数が多くなる)ことを考えると長持ちする七輪を選びたい。七輪本舗で取り扱っている商品は、七輪の材料である珪藻土を切り出して成形している。結果、安い七輪(珪藻土を砕いて練っているもの)より耐久性が高い。

理由2. 関連商品も多く扱っている

七輪で使われるおもな燃料は「炭」。そうすると、炭そのものだけでなく、炭に火をつけたり、使い終わった炭をどう片付けるかも考える必要が出てくる。

また、普通の賃貸物件は七輪の使用をまず想定しない。だからこそ、七輪を置く所が熱で影響を受けないようにする「土台」を用意することも考えなければならない。

業者の「七輪本舗」なら、七輪だけでなく、七輪を使うときに必要となる商品が一通りそろっている。

リンク先:

お題3. えらぶ七輪は「お外で七輪」か「お卓の七輪

理由1. 外に持ち出せる

お外で七輪は屋外、お卓の七輪は屋内での使用が想定されている。それでも両者とも、持ち運ぶためのペール缶に収納できる。

理由2. 標準的な大きさ

お外で七輪 、 お卓の七輪 のいずれも、大きすぎず・小さすぎずの寸法である。

お題4. えらぶ燃料は「備長炭」か「オガ炭」

理由1. 煙やにおいが出にくい

集合住宅ではとくに、煙やにおいに気をつかう必要がある。煙やにおいの原因はおもに、炭にふくまれる樹脂成分。備長炭は樹脂成分がほとんど残留していない。またオガ炭は備長炭とおなじカテゴリーである「白炭」に近い性質である。

理由2. 少量で長持ちしやすい

黒炭とくらべると、白炭である備長炭や性質の似ているオガ炭は、少量で火が長持ちします。とくにオガ炭は比較的安価なので、炭をつかう料理屋で多用されるようです。

お題5. えらぶ周辺用品は?

  • 火起し器: より簡単に速く、炭に着火するために。
  • ペール缶: 七輪を収納して持ち運べるようにするため。

お題6. 気づいた注意点

気づき1. 煙、ニオイ、一酸化炭素

一軒家とくらべると、集合住宅の場合は煙やニオイへより気を配る必要が出てくる。また一般的な熱源である電気やガス以上に一酸化炭素中毒に注意する必要もある。これらへは、七輪をつかう場所に配慮することで対処できる。

端的にいえば、七輪をつかう場所を基本的に「台所」にし、換気扇を常時使う事で対処できる。

気づき2. 熱対策

七輪も使えば熱を持つ。とくに居間のテーブル上で使うといった「台所以外の場所」で使うなら、七輪の下部から発生する熱への気遣いも必要になる。これに対しては、上述の「高さ調整台」や七輪本舗で扱っている「テーブル断熱材」など、七輪の下に敷くことで対処できる。

気づき3. 使いまわし

火がついて調理するまでの時間を比較すると、ガスや電気の方が炭より速い。すぐに火を使いたいというニーズを考えるとガスコンロやIHヒーターの存在は欠かせない。料理のしやすさを考えるとコンロは2口欲しいので、「コンロの一部だけを七輪にする」という方針で対処できる。

お題7. 残った課題

課題1. コンロとしてのコストパフォーマンス

七輪本舗で扱っている七輪が耐久性の高い素材を使っているとしても、普段使いをした場合に、どれだけの期間使えるかは使ってみないとわからない。その期間がガスコンロの使用期間と比べてどうなのか?も不明だ。2口のガスコンロを中古で買って、「つぎの転居まで使えるか?」は不透明である。

課題2. 燃料としてのコストパフォーマンス

備長炭は比較的高く、どこで買えるかははっきりわからない。オガ炭は備長炭より安価だしホームセンターでも買えるようだが、「最寄りのホームセンターで売っているか?」や「実際にいくらなのか?」ははっきりわからない。そして、一番に言えることでもあるが、おなじ料理をした場合にガスと炭のどちらが安上がりなのかは試してみないことにはわからない。

課題3. コンロ・燃料の維持管理

ガスコンロは汚れを掃除する必要がある。さらに、魚を焼いたりするときの「グリル」が付いているならば、その掃除はかなり面倒である。一方七輪の場合、汚れを掃除することは基本的に想定されていない。

燃料について言うなら。ガスの場合、燃料としての保管を想定する必要がない。一方炭の場合、保管場所が必要な上、湿気対策として乾燥剤を用意する必要に迫られる。

これらについては、現時点で判断できる情報が少ないために比較・評価が難しい。

課題4. 使い勝手

火が使えるまでの速さをくらべると、炭よりもガスの方が明らかに速い。また七輪の場合、熱源となる炭の特性上(火持ちが長い)、火を使う必要が無くなった後も「消火」して冷えるまでに時間がかかる。さらに夏におけるユースケースを考えると、火をつかう時間が短くなることが予想されるため、夏に七輪を使うのはガスと比べて勝手の悪くなることが予想できる。

自分にはあわない

Vivaldi ブラウザのヘルプを見たとき、気になる記述を見つけた。RSS やポッドキャスト もサポートしている、との内容。さっそく調べたら、どうやらデスクトップ版、つまり PC でのみ対応している模様。という事で、真夜中なのにゴソゴソとパソコンを起動。

結果として、RSS と ポッドキャスト、いずれも Vivaldi ブラウザ上で登録も利用もできた。しかし、ここに落とし穴が。。。自分の Outlook アプリで同じことができていた事、そして、Outlook 経由での利用が長続きしなかった事。それらを思い出したのだった。

RSS の場合。 更新数が多いと、その件数にゲンナリして、結局閲覧しなくなる。ポッドキャスト の場合。 WEB メール上では、着信メールのような形で表示される。使い勝手は無料の Google Podcast の方が優れている。

と言うことで、Vivaldi で RSS や ポッドキャスト を運用することは現状として断念したのであった。。。